K.U.E.L. INSTRUCTORS
2020
特別対談企画③
Mr.Eboshi × Ms.Kakuta
はじめに
本企画は現役生とオープンジャッジの接点、関わる機会が極めて少ないことを疑問視したのがきっかけで企画しました。本企画では、ジャッジ方がスピーチに何を求めていて、どう考えていらっしゃるのかを対談形式でインタビューを行っています。これを読んだ方は是非、自分のスピーチに存分に活かしていただきたいです。
第三弾でラストを飾ってくださるのは、江星建太様×角田亜沙子様です!!!!ESS出身のお二人だからこその観点や視点をお聞きしました。今回ももちろん必見です!!!!!!!
PROFILE

江星建太 様
ご趣味 食べ歩き、ランニング、PC、もちろんスピーチ!
好きな食べ物
ラーメン、寿司

角田亜沙子 様
ご趣味
映画鑑賞
好きな食べ物
麺類
×
記事の最後ではお二人のおすすめスピーチも掲載させて頂いていますので必見です!!
インタビュー本文
―最近のコロナ禍でオンラインの活用などで働き方など変わったかと思うのですが、お二人はどういった働き方をされていますか。
江星:私は今は働いてなくて、去年の4月から学生に戻りました。授業などは全部オンラインになっちゃったので同期や教授とは対面で会えてないですね。
角田:私はずっと住友商事で働いていて、比較的PCで完結する仕事がメインなので3月から一度も本社に出社してないですね。今子育て中で短時間勤務なのですが、通勤時間もないことから個人的にはワークライフバランスは充実した方の人間ですね。
―ありがとうございます。
お二人はいつ頃からジャッジをされているのでしょうか。
江星:(エクセルにまとめてくださいました!)どうも記録上は2008年の5月のあやめ杯というジョイント大会が初めてのジャッジでした。オープン大会の本選ジャッジは2013年のだるま杯が初めてですね。全部で65大会、本選は29、見たスピーチ数は延べ1132本ですね。僕は暇人なので(笑)
角田:私は社会人1年目(2010年)の時が初めてです。大会名は忘れてしまったんですが。そこから毎年1~3個の本選ジャッジを、2年に1回ほどのペースでエリミジャッジをやってますね。英語がプロの外国人の方々とは少し違った目線でジャッジしてるような形です。
―ありがとうございます。
これまでと現在のESSのスピーチ界についてどういったところが変わったなぁと感じられますか。
江星:結構トレンドはあるのかなと思って、角田さんや私の代ではあまりバリュースピーチを良しとしない傾向があったかな。その代わり、いわゆるソーシャルのスピ―チを書きましょうという風に教えられていました。
角田:どんなの書きました?
江星:大1のESSの合宿の時に書いた“Leisures for Teachers” という、忙しい先生たちについてのスピーチで、今読み返したら赤面するほどの物です(笑)そのあとは日韓について、そして最後が“Death Education”という死をもって生きようって感じのスピーチかな。角田さんはすごいですよ、勝ちまくってたんで。
角田:(笑)えっと、今と昔の違いについては江星さんと同じで今の子の方が言いたいこととか自分の想いを伝えたいという自分の欲望が強いように見えるかな。サジェスチョンは強くないが、その分想いが溢れてるスピーチが昔より多いように見える。あと絶対的に英語力が今の子たちの方が上。使う単語の質や根本的な文法のレベルが高い。トーストマスターズとかTED Talkとかを見て、いいスピーチを見れている分、英語の発音とかも良い子多い。私の時代は私以外に帰国子女とかもほとんどいなくて、今は帰国子女の子も割といると思うけど、そうじゃない子でも発音がいいから、レベルが格段に上がってる。今だったら私なんて到底敵わないと思う(笑)
江星:トピックに関しては明確に潮目が変わったなという瞬間があって、3・11を境に学生のスピーチがガラッと変わったなと。それまではソーシャルチックな話が多かったが、3・11後からは、絆や人とのつながりとかが世の中で大切にされてきて、エモーショナルなスピーチが流行ったよね。
角田:確かに。私が現役の時はそれこそ、憲法9条反対や慰安婦問題、死生観とかそういうスピーチを書いていましたね。QAのたたきどころがないように準備しなさいって感じでした。今はQAを逆手にとって言いたいことを追加で4分間話せるよって感じだと思うんだけど。もちろんどっちが良いとか悪いとかでもないけどね!
江星:今はバリューバリューしてるというより、またちょっとソーシャルの要素が入ってきているように見える。君たちはZ世代と呼ばれていて、社会問題に関心がある人たちが多いと言われていて、それがなんか反映されている気がする。前だったらタブーと思われていた話も結構オープンに話す人もいて、社会が反映されていますよね。
―死生観というのはどういう内容だったんですか?
角田:簡単にいうと、命というものは有限であることを私たちは日常生活で忘れてしまう。例えば、水が尽きると言われてから大切にしだすのと同じように、人間は生きるうえで死というものを意識しなければ、命の有限さ、大事さというものを認識できないから、死というものをもっと丁寧に、若者に教育や社会的メッセージを通じて伝えていかないと自殺者だったり、がんになった時に自分がこの先どう生きるかの決断に悩んだり、遅れたりするから、死をもっと近いものとしてとらえる大切さってことですかね。
―是非読んでみたいと思います。ありがとうございます。
今の人たちは、自分の経験が辛くて、それを乗り越えたことをもとにサジェスチョンにつなげるという、流れのスピーチが主流だと思うのですがそれについてどう思いますか。
角田:そうですね、まず私はどんなスピーチでもいいなと思っています。ソーシャルがいいとかバリューがいいとかはないし、サジェスチョンも別になくてもいいスピーチは全然作れる。ただ、サジェスチョンがあった方が、聴衆にとっては聞きやすいし、聞いてよかったって思いやすいから、サジェスチョンがあった方がスピーチ作りは楽かなって思う。私は基本的に大会からもらっている採点表で英語の比重とか、タイトルの比重とかをみて、評価するので、大会ごとに勝つ子が変わりますよね。だから、どういうスピーチがいいとかはなくて、ただやっぱり、そのあふれる想いがあるからこそ、ちゃんとそれを整理して、言語化しないとそれが伝わらないというのはあるかな。私も慰安婦のスピーチを書いたときは、割と思いが強かった分、熱くなっちゃって逆にそれをまとめるのが難しくて、早稲田杯でコテンパにされて、半泣き状態でQA終わった(笑)。だから今の子は繊細なトピックであふれる想いで伝えようとしているからこそ、そこをちゃんと、言って満足ではく、伝わるように構成立てて言語化しないと結構難しいんだろうなとは思うかな。
江星:私も書いてくれたものはなんでもいいと思ってる。なんだろ、自分の想いを伝えるスピーチというのは、スピーカー自身が言って満足ってなりかねなくて。スピーチって聴衆の行動変容だったり、考えを変える要素がないと失礼な言い方だと自己満足でおわる可能性がある。だから、自分の伝えたい思いをスピーチにするのは良いんだけれども、じゃあそれが聴衆に対してどんな意味を持っているのか、メッセージはなにかそして、最終的にどうしてほしいのかまで踏み込んで話さなきゃいけないよね。
角田:なんだかんだ何十人の8分間の貴重な時間を頂いているわけだから、何かしら聴衆が持ち帰れるものを与える意識をもたないと。自分の表層の感情ではなく、その一歩奥のところを表現できると、私はそういうスピ―チでの考え方とかが社会人になってからも活きたし、就活での自己表現にも直結したのがあるから、せっかく大学何年かかけてスピーチ活動するなら、そこまで踏み込んだ思考回路が構築できるようなスピ―チを書いて、その後の人生に活かしてほしいなって思います。

―近年ではESSスピーチに型みたいなものがあり、例えばToday, I’d like to talk about~やAfter listening to my speech~などの決まり文句、二つのジッコウセイ(実効性、実行性)など。お二人はこの型についてどう思われているでしょうか。
江星:型ってソーシャルスピーチを書くときに特に使われやすいのかなって思って、PHCSとか。社会問題について書くとき僕は二つのジッコウセイはマストだと思っている。しかし、さっき言ったバリューとか溢れる想い系のスピーチでそれを持ち込んでしまうと逆に壊してしまうかなって思います。
角田:私もそう思います。型を使うことで聴衆の琴線に触れられるような題材は是非使った方がいいですね。その一方で型にハメてしまうとどうしてもストーリーライン的に理解しにくくなるってのはあると思います。つまり、題材選びの時と同時にストーリーライン、どういう風に聴衆を巻き込んでいきたいかを並行して考えていくといいのかなと思います。型を使うのは良い悪いではなく、この題材はどのような語り調で書くのかが効果的なのかを整理していくと迷子にならないよね。
―予選を通過するためには、やはり型を守らないといけないと考えてしまう子が多いとも思っています。
角田・江星:ないないない。そんなことは全く見てない。
角田:でも確かにジャッジによるのかもしれないけど、私と江星さんはスピーチの全体をみてジャッジしている。それ(型)が一番大事には絶対ならない。それよりも文法、スペルミスでガンっと下げる。そっちを守る方が大事。でもそれ(文法等のミス)が一番大事ってわけではなく、それはあくまで足切りになるだけで、私はコンテンツを重視する人なので、内容がしっかりしていて、それが何かしらの話でサポートされていて、聴衆に何かしらのメッセ―ジがあるっていうのが私は大事だと思っている。その一方で、何十というスピーチの中でトップ15とかを10位以内にどう入れていう上で、そこまで絞るために落とす大きいところが基本的なところ。聞いていてスッと入ってこなかったり、文法ぐちゃぐちゃとか、わかりにくい単語が多いなと感じると落としちゃうかな。
江星:私もコンテンツを一番重視しますね。まぁなるべく帰国子女じゃない子にも出てほしいなぁと思って、帰国じゃない子はイングリッシュ、デリバリーでどうしても帰国には勝てないので、そうするとどこで点を稼ぐかってなると、コンテンツしかないわけですよね。私はだからそこを見てました。でも帰国の子たちの方がコンテンツも仕上げてくる印象を持ってるんですよ。じゃあどうすればいいかってのは、オープンのコメントでも言ってるんですけど、「とにかく過去スピーチを読みなさい。」できればメジャーな大会で勝ってるスピーチ。それで学ぶべき。どんな内容で話してて、どういうストーリーラインで構築されているか、どんな表現を使っているか、を徹底的に研究する。で、コンテンツをこれでもかってくらいに極めてくれれば、オープンに出られる確率が上がると思う。過去スピーチというのは皆さんの財産なわけで、これを使わないのはもったいないなって思うんだよね。あと挙げるとすれば、人にスピーチを見てもらってコメントをもらう。予選ジャッジする時に、チーフとかに出せ出せって言われてとりあえずボンって出したって感じの子は読めば明らかにわかります。(笑)
―ジャッジをされるときに、どういうところを重視されるかとお話しをされていましたが、どういうスピーチが良いなと思われますか?
江星:そうですね~。バリュー色の強いスピーチよりもロジカルなスピーチの方が個人的には好きなので、きちんと調べてあること、ロジックがきちんとしている、その上でソリューションも面白いものをなんだかんだ高く評価していますね。
―今までにこのスピーチ良かったな、というスピーチはありますか?
江星:植木日奈子さんの手話のスピーチ。また、WESAの方の母乳バンクのスピーチですね。テーマとして非常に面白かったです。
―角田さんはどんなスピーチが良いと考えていますか?
角田:何かしら伝えたいことがあって、コンテンツがしっかりしているものは大会に出させてあげたいですね。自分が学生だったらこれを聞きたいと思うか、聞きやすい、何かしらそのスピーカーがこのスピーチをもって何を語りかけたいのかが見えるか、というところですね。一方で、あまり「これ!」というのは逆に作らないようにしてて、自分の考えと違うもの、例えば死刑囚を全員脱獄させた方がいいってスピーチがあったとしても、賛成はしないにしてもその考えや説明が納得に足るものであれば聞いてみたいので、その大会は通すと思います。
角田:ドラスティックな考えを持っている人、例えば白人主義者の人たちも、「なんでこんなこと言うんだろう」と思うんですけど、彼らのウェブサイトとかを見ると、彼らなりにしっかりとした考え方があって、だからこそちゃんとした大学に行っているにもかかわらずそういった派閥に入っちゃう人もいるんだと思います。彼らなりに考えがしっかりしていて、ソーシャルイシューとしてこういったことをそう思うという、だから是非あなたたちも私たちの組織に、というプロパガンダをしている。私が一切賛同しない考えであっても、彼らもきちんと説明ができている。これは学生の英語スピーチも同じだと思っていて、どんなコンテンツでも、それがちゃんと順序立てて説明されていて、例え賛成できないとしてもそれによって何かしら得るものがある、聞きやすいな、というのが基本的には大会に出てきてほしい、出したいと思いますね。それ以外はできるだけフラットな目線で見るようにしています。「え~それ違くない」と個人的な反対意見を持ってジャッジするのは違うと思うので。
江星:そうですね。基本的に理由付け、ロジックがしっかりしていれば何書いてもいいのかなと。あまり日本では白人主義者などのトピックは見ないですけれども。ロジックさえしっかりしていればタブーであったりとか、ギリギリの際どいラインだったりのトピックもアリなのかなとは思いますね。ただ、注意しなければいけないのは、他のジャッジさんには色々な人もいるので、ちょっとコンサバな人であったりとか、前衛的な考えの人がいたりすると、QAなどでボコボコにされる恐れはありますね(笑)
角田:本当にそうで。慰安婦の時はボコボコにされました。慰安婦問題は基本的には日本政府の対応の仕方が悪くて、日本が謝るべき、みたいなスピーチを書いたんですね。ボコボコにされた(笑)
江星:もちろん角田さんのような思考を持っている人もいれば、そうじゃない人もいる。だからそうじゃない人にあたったときに大変なことになってしまう。
角田:でもそういう目にあったとしても、書いてよかったなと、当時は思わなかったけれども、書きたいという気持ちがあるものはガンガン書いて良いと思う。
江星:スピーカーとしては冷や汗ものかもしれないけど、オーディエンスとしてはそういったもののほうが勉強になるんじゃないかな。
―たしかに政治的な話って最近ESSで聞かないですね。
角田:私は聞きたいですねー。学生がどんなことを考えているのかを知る貴重な機会なので。年に何回かぐらいが学生と直接会える機会なので、今の学生がどんなことを考えていて、苦心しているのかを知りたい。バリューに熱い思いがあるからこそ、そういった学生は政治・社会に対してもあふれるような思いがあるんじゃないかなって思うから、私は幅広くそのへんについても聞きたいです。バリューだけじゃなくて、もしそういうのもあれば私は嬉しい。
江星:少し私の愚痴にはなってしまいますが、バリューを選んでほしくないっていうのが実はあって。というのも、最近はソーシャルに揺り戻しがあるとは思うんですけど、ソーシャルは難しいと思う人がやっぱり多いのかな。いっぱい調べなきゃいけないし、そんなのやってられないというか。だからこそ比較的自分の体験を書きやすいバリューに流れていっちゃうのかなというのはもしかしたらあるのかもしれないですけどね。ある意味そういう風にしてほしくないですね。例えばバリュースピーチでオープンコンテストで勝とうと思うと、めちゃくちゃ難しいんですよ。ジャッジは学生よりも10年、20年先を生きてる方が多いので、酸いも甘いも皆さんよりわかってるつもり。だから20代の皆さんのバリュースピーチを聞いたところで、なかなか点高くはつけられないんですね。よっぽど悲劇的なエピソードを持ってこられたりすると、心が動くことはあるんですけど。そうじゃないとなかなかコンテンツで良い評価ってのはつきづらいのかなっていう。
角田:英語力の有無にかなり左右されてしまいますね。
江星:その点、ソーシャルのいいところは調べれば誰でも書けちゃうってところなんですよ。例えばさっきの慰安婦の問題とかも、とっつきづらいところはあるかもしれないですが、大学の図書館とか本とか論文とかほじくり返せば、いっぱい情報って出てくるので、それを上手く組み立てて、で自分なりのアレンジを加えてソーシャル問題に少しバリューの要素を入れてあげる。そうするとバリューよりもコンテンツをジャッジが付けやすいスピーチになるのではないかなと。もちろん無理して全てソーシャルスピーチにする必要はないです。4本あったら1本はソーシャルにチャレンジして欲しいですね。頭の体操になるし、ロジカルシンキングが非常に鍛えられると思いますね。
角田:大会に出ることのみをスピーチ活動の目的にしてほしくないというのが私の中にはあります。スピーチの週何回かの活動の中で、ソーシャルのスピーチのコンテンツだと、部員同士だと指摘しやすいと思うんですね。何分かでエクステンポでソーシャルの話をしましょうってなったときに、突っ込みやすいと思うんですね。バリューの話ってそのトピックに近しい経験を持ってないと活発に指摘できないですよね。聞くしかなくなっちゃう。ニュースに出てるトピック、温暖化、投票とかどんな人も関われてある程度の意見を持っているから、これらの意見交換をすることでセクション員同士での活動が活発になって、それこそ就職した後とかにも活かせる思考回路とかが手に入るのではないかなと思います。私なんて12年前とかの話なんですけど、スピーチの合宿で周りが私よりみんな頭いいんですよね。私大学一橋なんですけど、帰国子女入試で入っているから、頭のレベルが劣っていて、部員達にボコボコにされてそれがすごい活きてますね。色々な視点が手に入った気がします。こんな感じでみんなが同じ感覚で話せるのはソーシャルですね。
江星:そうですね~。今私ソーシャルのスピーチ書こうとしたらいくらでも書けます(笑)。そういう意味だとネタは沢山あるのかなと思ってて、例えばコロナ一つとっても10個ぐらい作れると思うんですよね。
角田:はやりもあるのかなという一方で、私が学生の時よりも今の学生の方が忙しいのかなとも思っていて。スピーチ活動だけじゃないよ我々、って子達が多いんじゃないかなって思ってて。今の学生さん達はスピーチ活動ももちろんのこと、バイトも学外の学生団体の活動もやるし、インターンもやるし、ゼミも本格的だし、留学もやるしで忙しくて、あまりフォーカスする時間が少ないんだろうなと何となく感じています。だからこそ、自分の周りの出来事の中で何を書こう、1年に2本書く時間がなくて1年に一回書くとしたら何を書こうと考えたときに、自分のあふれる思いを伝えるためにバリューを書くことに決めることになりやすいのかなと私は感じました。めまぐるしく変わる環境、色々なことをさせられる環境に変わってるこそなのかなとも思いました。でもだからこそ、しっかり書くトピックを深く思考してほしいなと思いました。

―コロナの影響でオンラインでスピーチ大会が行われるようになっていますが、今までに印象的だった大会と、コロナに関してオンラインだったらどんな大会がいいとかなどありますか?
角田:私の中では「このスピーチ聞いて良かったな~」ってスピーチをしたスピーカーが出てる大会が印象に残ってるんですね。だから大会の運営方式がどうとかとは少しかけ離れてる大会になってしまうかなあ。あとは、2年連続で同じ人が優勝している大会は印象に残ってる。私は個人が目立っている大会が印象に残りますね。聞いて良かったな~こんな貴重なスピーチを学生から聞けた~っていうのが私の中では最も重要ですね。
江星:私は関東でしかジャッジしたことないんですけど、みんなが出たがる大会は運営のレベルが高いですよね。ジャッジとしても心地が良いし、学生達も楽しく帰れる、学びがあるのかなと。マネージのレベルっていわばそのESSのレベルをそのまま表してしまうと言うか、名前は伏せますが、もっとマネージ頑張ろうよって大会もあったことにはありましたね。
角田:江星さんも同じ意見だと思うけど、ジャッジがやりやすかったってのはそんな重要じゃなくて。これは覚えててほしいです。良いスピーカーが集まる大会ってのが一番重要です。だからスピーカーにとって出たい大会であるための工夫がされてればスピーカーが集まって、スピーチ大会としてのレベル、スピーカーのレベルも上がるだろうし、それによってオーディエンスは聞きに行きたいし、ジャッジもジャッジしたいと思いますね。あとは、3個ぐらいの大学しかいないんじゃなく、北海道、関西、などそれこそ色々な大学の学生の集まる大会だと芳醇なスピーチが聞けてよりどりみどりだった、というのはあるかな。まあ一方でエリミがすごい大変になるのも嫌ですけどね(笑)。
―確かに、演出を考えるあまりどういうスピーカーを集めるのかって部分は薄れてしまっている部分ではあります。
江星:スピーチ大会ってオープニングムービーとかクロージングムービーを見に来てるわけじゃないので。やっぱりどういうスピーカーに来てほしいか、どんなスピーチを私たちは届けたいのか、というのは忘れてほしくないかなと思いますね。
角田:私はある意味記憶に残っているのが、どの大会も趣旨みたいなのあるじゃないですか。それこそ、虹、みたいなとか、花開くとか、例えばだけれども。大会を通じて、それに即したもの、例えばスピーカーのスピーチもそれに即していたり、エクステンポのスピーチもそれに付随したようなトピックが集められていたりとか、そういうのは比較的面白かったですね。
―オンライン大会を開催することに対してはどう思われますか?
江星:う~ん、私自身もオンライン大会をやったことがないので、どうアドバイスすればいいのかってところではありますが、やるならオーディエンスが沢山いた方がスピーカーも運営陣もやる気になると思いますね。例年にもましてそこには力を入れるべきかと。
角田:難しい時代ですよね~。私の働き方と照らし合わせて考えて見ると、私の今まで本社でやっていた仕事をそのまま家でやろうとすると弊害を感じてしまうのですけれども、全然もう違うようなことをする、大会であれば全く違うような形態でやってしまうといいのかも知れないですよね。例えば8分間のプリペアド、エクステンポをオンラインでも今までと同じようにやろうとするとかなり無理が生じてしまうと思うんですね。今までの大会をそのまま継続させるためにネットで行うというのは違うと思ってて。例えば、気持ちとしては「第一回 梅子杯ネット版」みたいな。気持ちとしては継続して行う大会というよりは新たな大会としてやるような気持ちにするといいのではないかなと思います。オンラインでは「いいね」が出来ると思うんですけど、それを有効活用してみるとか。ジャッジは10点「いいね」する権利を持ってて、オーディエンスは1点「いいね」ができるような大会にしてしまうとか。これは本当に思いつきで検証はしてないんだけど、こういうオンラインでしかできないことをしないと、苦しいとは思います。時間制限、7分とか8分もオンラインで不都合であれば撤廃するのも良いと思いますし。そのほうが楽しく出来ると思いますしね、無理にネットに合わせるのではなく、良い大会を使うためにどうネットを活用するか、を考える方が楽しいと思います。
江星:その通りだと思いますね。まあやむを得ない形でオンラインということではあるのかもしれないですけど、オンラインで開催すると意思決定したのならば、オンラインに適応する形で大会の形式を変えてしまうのもありなのかもしれませんね。
―マイナスに捉えがちですが、そのような考え方だとたしかに楽しく出来そうですね。
江星:ある意味、ネットで第一回って気持ちなら好き勝手できるじゃないですか。例えば何年か後にまたオンラインで開催しなくてはならないってなったときに“え、あの何年か前にオンラインでやった先輩達どうやってやったんだろう”っていう風に引きずってしまうかも知れないので、あまり自由な発想ってなかなか出来ないと思います。
角田:ミスありきだと思いますね。トライアンドエラーの精神です。ジャッジとかはオープンマインドですよね江星さん。
江星:そうですねー。ジャッジがあたかも主役のように大会で扱われるときあるんですけど、もちろん嬉しいんですが、あくまで主役はスピーカーの皆さんですので。
角田:ちゃんとこう、密なコミュニケーションでちゃんと説明して、ちゃんとした協力体制を整えてたら、ちょっとこう風変わりな大会だとしてもジャッジさんは比較的柔軟に対応してくれると思います。
江星:そんなにね、ジャッジのことは過度に気にする必要はない。主役はスピーカーの皆さんなので。
角田:一日の報酬とかもありがたく頂いてはいますけど、基本的にはボランティアの精神でやっていますので、やらせていただけることはありがたいですし、交通費とかも丁寧にして頂けるとより真剣にやろうと思わせて頂ける一方で、やっぱりこうスピーチ大会とかを学生からやってて、社会人になってからも携わる人間と携わらない人間いると思うんですね。でも携わる人間って基本的にスピーチが好きだったり、スピーチ大会が好きだったり、学生の頃得られた経験を今の学生が得てくれるならボランティアで是非やりたいと思ってると思います。それこそ収入源にしようなんてこと考えてる人は本当にいないと思う(笑)
本当にヘルプしたい、私はあとは学生が何をしようとしてることを知りもしたい。だから基本的にはジャッジさんにはお願いしたいことがあればして良いと思うし協力を仰いでも喜んでしてくれると思いますよ。
―ありがとうございます!最後に現役生に向けてメッセージを頂けますでしょうか。
江星:私からいきますね。かなり色々な人が言ってることだとは思いますが、大学生の4年間ってほんとにあっという間なんですね。せっかくESSに出会ってスピーチセクションにきて勉強してるのであれば、やっぱりオープン大会を目指してみんな出てほしいなっていうのが僕の願いです。で、そのためにはジャッジコメントでも何度も言ってるとは思うんですけど、スピーチ研究はマストかなと。過去優秀な成績を残した優勝スピーチなどのストックを引っ張り出してどんなことを言ってるのか、どんな言葉の言い回しをしてるのか、どんなストーリー展開をしてるのかといったことを研究して自分のスピーチの糧にしてってほしいなと思います。今日は話に出てこなかったんですけど、スピーチセクションにいる理由として「大会運営をしたい」って人もいると思うんですよ。僕が現役の時はジョイント大会の運営に命をかけていた人がいたんですよ。そういう人はもうスピーチはいいですと、大会、ネゴとして生きていきますという人ですが、そういった人はそれでいいと思います。マネージを頑張る人はマネージを頑張って、たくさんジョイントを開催したり、オープン大会観戦に行って糧になるものを持ち帰ったりして良いと思います。いずれにしても4年間しかない大学生活の中でESSに出会って、スピーチセクション出会ったのあれば、こんな機会は二度とないと思うので是非とも使い倒して、社会に出たときにも役に立ててほしいなと思います。
角田:まず、今学生って、大変だと思うんですよ。ほんとだったらキャンパスライフを送るはずだったのが、思っていたのと違ってしまっていて。一方で大変な思いをしている人たちが全員だからこそ、こういった中で自分たちに何が出来るのか、何をしたいのか。特に何をしたいのかですね。その中にスピーチ大会というのがあるのであれば、それに対して精一杯真摯に向き合っていけば、やっぱり得られるものは大きいのではないかなと思います。今の学生と私が学生だったときって時代背景も何もかも全く異なるし、全然私の普通がみんなの普通ではないというのはわかってるけど、私の中では3年間のスピーチ活動での経験や、考え方や人に言われたことというのは社会に出て間違いなく未だに役に立っていると感じているので、スピーチ活動というのは人生において良い影響を与えるというのは学生達にわかっていてほしいですね。色々な選択肢がある中でスピーチを選ぶのであれば、是非難しい課題に立ち向かって、良いスピーチを聞かせてほしいです。
江星:私からもう一つだけよろしいでしょうか。
―是非、お願いします。
江星:大学三年間であればスピーチをやる側、運営する側に立つことが多いと思うのですけど、余裕があれば教える立場、インストラクターになってほしいなと思いますね。スピーチを審査する側になると、それはそれで学びがあります。全然頭の使い方が変わるので、スピーチをやる側、大会を運営する側に加えて、スピーチを教える、審査する、大会を審査する側になる。そこまでやると、パブリックスピーキングとはなんぞやと言う部分への理解が深まると思います。
―ありがとうございます。本日は非常に濃いお話ができて、とても勉強になりました。お二人とも、ありがとうございました。
(文/西村健・菊田真志 編集/西村健・伊東陽生)
インタビュアー感想(田川加奈)
現役の時にご自身がされていたスピーチや、流行っていたスピーチが今とはまた違ったもので、とても新鮮でした。もっと自由に自分の思いを口に出して良いんだと思いました。
スピーチを通して、伝えたいことをわかりやすく言語化し、それを論理立てて説明する経験を積み重ねていきたいですね!
【特典】お二人のおすすめスピーチ
Mr. Eboshi
津田塾大学のRuri Kitamuraさんの「Telling the Truth」というスピーチです。私が天野杯で優勝したスピーチを執筆する際にお手本としたスピーチです。ロジックと情に訴えるという両方を実現した数少ないスピーチだと思います。
Ms. Kakuta
2018年アン・ハサウェイの国連での国際女性デーのスピーチと2014年エマ・ワトソンのUNWomen親善大使としてのスピーチ